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☆ (EDO-TTF)2XF6の金属-絶縁体転移に対する同位体効果

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 光誘起相転移現象の解析等から、(EDO-TTF)2XF6中では電子-格子(分子振動)間の相互作用が強く働いている事が知られている。X = P, Asの錯体について、ドナー分子を部分重水素化した(EDO-TTF-d2)2XF6を作製し、その金属-絶縁体転移の挙動を調べた。何れの陰イオンとの錯体についても、軽水素体に比べ、転移温度が約3 K上昇した(左図はX = AsF6での帯磁率の温度変化)。  振動スペクトルを調べたところ、C-H(D)結合に基づく振動のみならず、π-電子系の骨格振動も同位体シフトを起こしていた。中央の図は、X = Pの錯体のRamanスペクトルであり、ν4 - ν6のバンドは、それぞれ、右図に示した振動モードに対応する(ν6'はν6と別モードがFermi共鳴を起こして生じたバンドと考えられる)。  これらのモードが電子状態と有効に相互作用(結合)していると仮定すると、重水素化に伴う転移温度の上昇はPeierls転移の転移温度を与える理論式からの予測と定性的には矛盾しないが、他の効果も含め、同位体効果に関する解釈は現在も考察中である。

Y. Nakano, K. Balodis, H. Yamochi, G. Saito, M. Uruichi, K. Yakushi, Solid State Sci., 10(12), 1780-1785 (2008)

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